Vol. 03
特集「登録5周年 縄文世界遺産」
縄文デザインは、エモくて新しい (後編) / 道具にみる縄文の世界観
2026.09.18
機能的でありながら、現代のアーティストをも魅了する縄文時代の道具たち。そこには「実用」を超えた、縄文人の深い世界観が刻まれています。
2026年は「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録5周年という節目の年。これを機に、土器をはじめとした縄文時代の道具や装飾品が持つ、美しく豊かな世界に触れてみましょう。
暮らしに宿るアートと祈り
縄文土器や土偶に見られるさまざまな文様や装飾。あるいは、漆製品などに見る色彩配置。現代の私たちは、縄文人が込めた意図を正確に読み取ることはできませんが、そこには縄文時代の人々の心が反映されていると考えられます。
例えば、北海道初の国宝に指定された「中空土偶」(愛称:カックウ)を見ると、肩や脚には、「〇」と「△」を組み合わせた幾何学文が細い粘土ひもによって施されています。曲線だけでできた「〇」と直線だけでできた「△」という異なる2つの図形が、ひとつの土偶の上で組み合わされているのです。
また、現在はほぼ剥がれていますが、カックウには黒い漆の上に赤い漆を塗っていたことがわかっています。赤い顔料は埋葬のときにも使われ、「生命の象徴」として再生を願う意味があったのではないかと考える研究者もいます。では、黒い顔料は何を意味するのでしょう。さまざまな想像が頭をよぎります。
そして、日常の道具である縄文土器にも渦巻き文や雲形文などの文様、さらには粘土を貼り付けた突起などの造形が施されています。
このように、用途とかけ離れた装飾や造形が縄文土器の特徴でもあり、そこに現代の私たちは芸術性を感じることができます。もしかすると、それは、生きることへの祈りであったのかもしれません。
豊かである一方、厳しい自然の中で命をつないできた縄文時代の人々。そこでは、暮らしとアートと祈りが分かちがたく一つに結びついていたのです。
土器をはじめとした暮らしの道具の一つひとつに目を向けると、縄文の人々の心の一端をうかがうことができます。
北海道・北東北の縄文遺跡群って?
北海道、青森県、岩手県、秋田県にまたがる「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、豊かな自然の恵みを受けながら、1 万年以上にわたって採集・漁労・狩猟によって定住した縄文時代の人々の生活と精神文化をいまに伝える貴重な文化遺産です。
その価値が認められ、2021年7 月27 日、北海道・北東北の縄文遺跡群は、世界遺産に登録されました。
遺跡群を構成する道内の遺跡は、垣ノ島遺跡(函館市)、北黄金遺跡(伊達市)、大船遺跡(函館市)、入江貝塚(洞爺湖町)、キウス周堤墓群(千歳市)、高砂貝塚(洞爺湖町)の6つです。また、関連する遺跡(関連資産)として、鷲ノ木遺跡(森町)があります。
詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
「登録5周年 縄文世界遺産」ウェブサイトリンク(北海道縄文世界遺産推進室)
目に見えない価値を
感じ取ることができます
縄文文化の価値は、荘厳な建造物とは違い、目に見えるものではなく、心で感じるものです。画家のパウル・クレーが「芸術とは見えないものを見えるようにすること」言っていますが、私はそこにアートの可能性があると思います。
現代人にとっての縄文も、縄文の人々が自然との関係性の中で形にした「目に見えない価値」を感じ取る手段といえます。表現の背後にある高い精神性や技術力、身体知のすばらしさをきっと感じてもらえると思います。
北海道縄文世界遺産推進室
特別研究員
- 阿部
- 千春
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エモくて新しい縄文デザイン(前編) / 縄文遺跡はアートの宝庫
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